原型師という職業について、できるだけ簡潔に分かりやすくお伝えできたらいいなーと思い記事を作ってまいりましたが、今日からは実際にプロとして活躍されている方のコメントを紹介してまいります。

本日:浅井真紀 さん
明日:
越沼真司 さん黒田真徳 さん

明後日:S さん

浅井さんには「フリー原型師」として、越沼さん・黒田さん・Sさんには「メーカー原型師」としての視点で、コメントをいただきました。

しかもSさん以外はネイティブとお仕事をしたことがない方々ですので、完全な善意のみでご協力いただきました。 お忙しい中、本当に本当にありがとうございました…!



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浅井真紀さんからのお言葉

■ 原型師になって良かった事、辛かった事

一言で言い表すには、中々難しい設問です。
原型師ならではの……という前提であれば、幼少期から40代の今に至るまで、面白いとか素晴らしいと感じた存在に対して、成果として残る形で追いかけ続ける事が職業として成立するのは、とても幸福であると思います。

一方で、追いかけ続ける足が止まってしまえば、自分の可能性は一気に萎んでしまうであろうという恐怖心は常につきまといます。
これは日々、夢に見るほと恐ろしいです。


■ 原型師になって良かった事、辛かった事(フリーの原型師として)

毎朝出社しなくて良い事は楽ですし、人間関係の悩みも「毎日顔を会わせるような相手」と発生する事は少ないです。
また機材の導入や、作業場の改善、新しい手法の開発に関して、資金さえ許せば誰の許可も要らないというのは、色んな事を試したがる自分にはとても重要な要素でした。
思いついた事をやらずに居られないタチなもので、正直なところ、フリー以外の立場ではやっていけなかったでしょう。

一方で「管理されずに働く」事は、実はとてもしんどい事です。
自己管理能力を高いレベルで保つ事が出来れば良いですが、それが365日、10年、20年という単位になってくると、その難しさを感じざるを得ません。
管理してもらえる事や、やるべき事を定めてもらえるのは、仕事を続けるにあたって大きなメリットです。
フリーの場合、経理、交渉など、造形以外にもやるべき事はたくさんありますから、原型製作に集中できる時間は意外に少なく、上手く回せていない時は毎日がストレスフルです。

また、「フリー=自由に作れる」というような事は全くありません。
ガレージキットとして当日版権で販売する、というだけであれば、イベントルールの範囲内では自由ですが、一般に流通する商品であれば、フリーの原型師もメーカーさんから企画を頂いて仕事をするわけで、作りたいものを選べたとしても、それはかなり狭い範囲に限られます。

「フリー」という言葉こそ気楽なニュアンスがありますが、実際には「外注」であり「下請け」である、と解釈した方がよいかと思います。
自分も、若い頃は理想との違いに拗ねてしまっていた事が少なからずありました。


■ 原型師になろうと思ったきっかけ

とにかく何かしら発信できる仕事をしたかった事と、自分の育った場所から、海洋堂さんやボークスさんが近く、現実に製品を送り出している場を目の当たりにして、絵や文章を書くことよりも職業として現実的に感じられた事。
また当時のフィギュア(ガレージキット)シーンは、誕生して加速しはじめた時期でした。
そんな、新しい動きが始まるのでは無いか、という期待に満ちていたタイミングで、学校をドロップアウトしてしまい、踏ん切りがついたのが、情けない話ですが、きっかけです。

当時は、原型師を社員として抱えているメーカーは少なく、ようやくそういった動きも出始めたくらいの状況でしたから、原型師はフリーがあたりまえでした。


■ これから原型師を目指す人にアドバイス

原型師というのは職業です。
造形能力は必要ですが、それだけで成立するものでは無く、原型師に向いているか否かはまた別の話で、実際にはコミュニケーション能力や社会人として立ち振る舞いも求められますから「思っていたのと違う」という気持ちになることが、何度となくあるでしょう。

メーカーに勤めれば、会社員としてのストレスがあるでしょうし、フリーとして独立すれば、今度は自営業者としてのストレスに悩まされます。
やってみると驚く程に、ただただ、お仕事です。

こう書いてしまうと、やめておけ!と諌めているように読めてしまうでしょうか。

けれど、会社員としてしっかりやってゆく気持ちがあれば、日々の仕事は貴方が強く興味を持ちうる内容に満ちています。
自営業者としてしっかりやってゆく覚悟があれば、頂けた依頼は貴方の技量も立場もランクアップさせるチャンスそのものです。


楽しい仕事ではありません。
でも、楽しめる仕事です。

僕は、そうして頭角をあらわしてくる新しい仲間の参加を、焦りながらも楽しみにしています。



第一線で活躍する人の言葉というのは、積み重ねられた知識と経験に基づいているものなのでとても重く、これから同じ道を行きたいと考えている人にとっては何よりも参考になるのではないかと思います。

「楽しい仕事ではありません。 でも、楽しめる仕事です。」

ものすごい名言です。
日々を戦っている浅井さんの言葉だからこそ、重い。
原型師でもない私にも、胸に刺さるものがありました。

浅井さん、この度は貴重なお時間をいただき本当にありがとうございました。
どうかこの記事が、原型師を目指すたくさんの人たちに届きますように。



それでは今日はこの辺で。
また明日、元気にお会いいたしましょう! \(・ω・)/